『グッド・ボーイズ』の中でも重要な役である三人の少年を探すのに、スタプニツキーとアイゼンバーグは、ポイント・グレイ・ピクチャーズのリッチ・デリアに依頼することにした。「彼は、『IT/イット “それ”が見えたら、終わり。』(17)と『シャザム!』(19)を手がける間に、アメリカのすべての子役を見たと言ってもいい。彼はとても貴重な存在なんだ」とスタプニツキーが言う。
この作品の面白いところは、三人の少年の純粋さと、彼らにふりかかるとんでもないことのギャップだ。そのため、“ビーンバッグ・ボーイズ”を探すうえで絶対に外せなかった条件は、恥ずかしがらずに真剣にバカなことができることだった。「実際に、少年たちの純粋さと、とんでもないおバカなことのギャップからたくさんの笑いを生み出そうとしていた。他の作品ではあまり見られないと思う。子役たちは僕らを心から信頼してついてきてくれた」とスタプニツキーは言う。
主役の子役が決まったとき、理想的な選択をしたということは誰が見ても明らかだった。「主役の三人と作品をつくるのは面白かった。なぜなら、あの子たちはまだまだ若くて疲れることがないんだ。楽しませてもらったよ」エヴァン・ゴールドバーグとセス・ローゲンが語る。
さらに良かったのは、三人の子役たちは撮影が進むにつれて本当の友達になったことだった。「自分がすごく大切につくった作品の中で、お互い知らない者同士だった子が友達になり、本物の友情を育んでいく姿は見ていてとても面白かった」とプロデューサーのジェームズ・ウィーヴァーは言う。さらに「彼ら一番の関心事は、ランチに何がでるのかと、ホテルのプールが閉まる夜9時までに撮影が終わるかどうかだった。『今日の撮影がだいたい○時に終わるから、一時間はプールで泳げるはず……』と言っているのをよく耳にしたよ」とアイゼンバーグは語る。
子役たちは作品を通して新しい言葉をたくさん覚えたが、撮影以外でも新しく覚えた言葉を自由に使えるわけではなかった。カメラが回っていない所では、子役の保護者が汚い言葉の使用を厳しく禁止していた。「この作品で、最低でも11個の新しい罵り言葉を覚えたよ。うちではお母さんが撮影が始まる前に汚い言葉の使用ルールを作ったんだ。撮影のために覚えた言葉は、セットでしか言わないことってね」とヌーンが語る。ウィリアムがこう言い添える。「ぼくが演じたルーカスと違って、僕はいつもは汚い言葉を使わないんだ。お母さんにも、汚い言葉は撮影中だけで、そのシーンが終わったらちゃんとお祈りするよって言ってあるんだ」。三人は撮影が休みの日には、お泊り会をしたり、泳ぎに行ったり、ハイキングをしたり、一番のお気に入りのゲーム「フォートナイト」をしたりして遊んでいた。
子役たちに撮影中で一番楽しかったことは?と尋ねたら、「台本にない台詞を言うとき!」という答えが返ってくるだろう。幸いにも、みんなアドリブが得意だったのだ。「アドリブのシーンはなんでもありなんだ」そう語るのはヌーンだ。「思いついたことは割となんでも言っていいんだ。ジェイコブもキースもすぐにアドリブを思いつくし、しかも笑えるんだ」
“ビーンバッグ・ボーイズ”のリーダーとして、自由なアドリブの時間が一番心に残っている、と語るのはジェイコブ・トレンブレイだ。「撮影のなかでアドリブが一番楽しかった。監督に『こっちのセリフを言ってみて』と言われて台本にない台詞を試すのが好きなんだ。笑いそうになるのをこらえるのが大変なときもあったよ」